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国立科学博物館附属自然教育園

 自然教育園は東京の真ん中、白金にある貴重な森林緑地で、一部を除いて、積極的には人の手を入れていない豊かな自然が残っています。

 見ることができた花は、フキノトウ、フクジュソウ、ユキワリイチゲ、セツブンソウ、キブシ、椿などですが、花以外にこの季節にしか見られないものがありました。一つは樹形、そして、もう一つは実です。

この寒い季節、落葉広葉樹は、当然葉を落としていて、葉がある時には見ることができない、樹形、いけばなをする人間からすると「枝ぶり」がよく見えます。いけばなに使う樹種があると、思わず見上げてしまいます。

 実物(みもの)で目に付いたのは、万両、千両、カラタチバナ、ヤブコウジなどです。カラタチバナには百両という、そして、ヤブコウジには十両という別名があります。一両という名のアリドウシという植物もあるそうです。千両とヤブコウジは、花材としてお正月からこの季節に使います。でも、実の付け方によって、〇〇両と言われるのならば、何だか気の毒なような気がしてしまいます。

 この植物園に来るといつも思うことがあります。たとえば、いけばな展でしか見ることのできないビナンカズラ(サネカズラ)が、そこかしこの木に絡みついています。また、奈良の研究会の課題が「椿」と言われれば、東京の目ぼしい花屋さんを走り回りますが、この自然教育園の森林の奥を見れば、5~6メートルにもなっている椿の木に赤い花がちらほらと咲いています。かつては、身近にあったであろう植物がいかに遠いものとなってしまったことか。自然の中のあるがままの姿を見つめていきたいと思います。


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