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いけばな展のこと(2024年)



 

 今年も日本橋高島屋で山村御流いけばな展をご高覧くださった皆様、心より御礼申し上げます。


 今年の私の作品は、かなり渋めだったように思います。

 花器は、漆工芸家、本間幸夫先生の「あけび手木皮花器」です。古美術の方に、こちらはいかがですかと勧められたのが出逢いでした。その名の通り、杢目を生かした木皮に漆が塗られ、色は黒に近いグレー、質感はマットで、私の知っている漆のイメージとは一味違っておりました。そして、あけびを素材とした手が、重厚感のある花器本体にそぐうようにしっかりと付けられています。

 花材は、花梨とアイリス。花梨は、照りのある黄緑色の美しい葉が小さいながらも己を主張し、先端にはかわいらしい赤の蕾が付いておりました。その枝を、お日様を浴びながら木の一部であった頃の自然な姿に戻すように、人為を極力さけて器に入れました。

 アイリスは、どっしりとした花器に釣り合いますし、葉が流れを出します。実は、アイリスは、お稽古で年に一回は生ける花材です。だいたい、季節を先取りして春先に生けることが多いのですが、いつものように生けておりましたら、「4月のアイリスは、葉も花も春先のお稽古の時よりも長い」というご指摘を先生から受け、「花は野にあるように」は、時間をも纏わなければいけないことを改めて思いました。

 このブログを書くにあたり、本間幸夫先生のHPを拝見しました。本間先生が出版された「UTSUROI」というご本の中には、全てのものが時間とともにゆっくり変化する「うつろい」という概念を大切にされているとありました。木皮(きがわ)や漆塗りの肌を持つ作品が仕上がったときから、ゆっくりと変化を続け、その折々で豊かな表情を見せるとおっしゃっています。スパンこそ違え、山村御流のお花も「うつろい」を大切にしております。出逢えた器の一瞬とコラボできたことを幸いに思いました。


本間幸夫『UTSUROI 本間幸夫の漆の仕事』日経BP、2018年。

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